中国で進むロボタクシー革命:低価格で実現する未来の交通
中国では、無人運転タクシー、いわゆるロボタクシーが急速に発展しています。その中心にいるのが、中国版Googleと呼ばれる巨大IT企業「百度(Baidu/バイドゥ)」。
本記事では、そのバイドゥが10年にわたり研究開発している自動運転プロジェクト「萝卜快跑(Apollo Go)」と、中国・武漢での商業利用現状について解説し、未来の交通について考えてみました。自動運転の知識がない方でも「そうか~」と納得できるよう分かりやすく解説したので、ぜひ最後までご覧くださいね!
目次
「Apollo Go」とは?
「Apollo Go」とは、中国のIT大手、「バイドゥ」が手掛ける無人運転タクシーサービスのブランド名であり、中国語では「萝卜快跑(ルオボクアイパオ)」と呼ばれています。2017年に世界初のオープンプラットフォームとして公開された自動運転プロジェクト「Apollo(アポロ)」の一環として、現在では中国国内外で注目を集めるモビリティサービスへと成長しています。
初期の「Apollo Go」は、条件付き自動運転(レベル3)を目指したモデルからスタートし、この時期は、常に安全ドライバーが座っている必要がありました。その後、特定の条件下でレベル4の機能を実現する移行期を経て、2022年には、完全自動運転専用に設計された第6世代「Apollo RT6」を発表。このモデルはハンドルを取り外せることが特徴で、車内空間が自由にカスタマイズできるようになりました。
また、RT6モデルは、コスト削減のためにバッテリー交換技術を採用しており、1台当たりのコストを約3万ドル(約400万円)以下に抑えることに成功しています。競合アメリカ企業である「Waymo」の最新車両「Geely’s Zeekr」が1台当たり15万ドル(約2,000万円)超と見積もられている中、価格競争力は圧倒的です。
従来の車両にあった高コストや空間設計の制約といった課題を克服した「Apollo RT6」は、無人運転タクシーの普及を加速させる鍵となっています。
自動運転の「レベル」とは?
自動運転ではよく「レベル」という概念を用いてその技術水準を表しますが、その定義について簡単に触れておきます。
自動運転のレベルは、システムの自動化度合いと人間の関与度を明確に分類するための基準です。現在実用化されている技術はレベル4までであり、レベル5はまだ開発段階です。
レベル⓪:自動運転なし(No Automation) |
ドライバーが100%車をコントロールし、車両に自動運転機能はない。従来の車のことを指します。 |
レベル①:運転支援(Driver Assistance) |
システムが、アクセルやブレーキ、ハンドル操作(車線維持支援)など特定の操作を“単独で”サポート可。ただし、運転手は常に運転を監視し、自分で運転を続ける必要があります。 |
レベル②:部分的自動運転(Partial Automation) |
システムが“複数の”運転操作を同時にサポート可。ただし、ドライバーは常に運転を監視し、必要に応じて操作を引き継ぐ責任があります。 |
レベル③:条件付き自動運転(Conditional Automation) |
高速道路や特定エリア内など、特定の条件下でシステムが完全に運転。この間だけドライバーは監視義務を一時的に免除されるが、緊急時には運転を引き継ぐ必要がある。レベル3は「システムが主役」になる初の段階です。 |
レベル④:高度自動運転(High Automation) |
特定の条件(特定エリアや天候下など)ではシステムが完全に運転し、ドライバーの介入は不要。ドライバーがいなくても目的地まで移動できる。「Apollo Go」RT6はこのレベル4に該当します。 |
レベル⑤:完全自動運転(Full Automation) |
条件を問わずシステムが完全に自動運転を行う。人間のドライバーは一切関与する必要がなく、車内にハンドルやペダルが存在しない場合もある。 |
中国・武漢での驚きの低価格サービス
自動運転車両のテストと商業運用の先行都市である武漢は、ロボタクシーの分野で上海や北京、広州など他の大都市を大きくリードする存在。約500台の車両が市中心部から交通拠点、開発地区までをカバーし、人口の半数以上である約800万人が居住するエリアでサービスを展開しています。
さらに、他都市では無料の試験運用や小規模なサービスにとどまる場合が多い中、武漢ではすでに本格的な有料サービスを開始しています。ユーザーは「萝卜快跑(ルオボクアイパオ)」アプリをダウンロードして、簡単にロボタクシーを呼ぶことが可能です。

しかも「萝卜快跑(ルオボクアイパオ)」の料金は格安に設定されており、10kmの走行で4元 ~ 16元(約80円 ~ 320円)!この価格は、一般のタクシーや配車アプリの料金(18元~30元)とは比べ物にならないほど低く、そのコスパの良さから多くの市民が日常的に利用しているそうです。
世界初の無人運転都市を目指す武漢
武漢では2024年末までに運行車両を1000台に倍増させる計画が進行中です。現在、武漢には約17000台の一般タクシーが存在しますが、ロボタクシーがその一部を代替することで、より効率的で経済的な交通手段を提供することが期待されています。
ロボタクシー普及が社会に与える影響
中国のソーシャルメディアプラットフォーム「微博(Weibo)」で8000万回以上視聴された動画では、ロボタクシーの乗客が「車を買う必要がなくなる!」とつぶやいています。まさにロボタクシーがもたらす社会的変化を象徴した言葉です。
個人で車を所有するというこれまでの常識が揺らぎ、移動手段が共有される新たな経済システムが拡大。この新システムは、自動車産業や都市インフラのあり方はもちろん、人々の生活スタイルや価値観にまで大きな影響を及ぼすことでしょう。
例を挙げれば、駐車場のスペースは不要となり、都市空間は公園や住居など、市民のための用途に再利用されるかもしれません。一方で、自動運転車両が膨大なデータを収集・活用することで、プライバシーの問題やサイバーセキュリティの課題も新たに浮上してきます。
ロボタクシーの普及は、便利さと効率性を追求するだけではなく、私たちが「所有」や「移動」についてどのように考え、未来の社会をどう設計していくのかという、根本的な問いを突きつけているのです。
こうした技術革新がもたらす恩恵を享受しながら、同時にその影響を慎重に見極める必要があります。あなたは、車を持たない未来、そしてそれが実現する社会をどう想像しますか?社会に生きる一人一人が、ロボタクシーが主流となったその先の世界を考え、創っていく必要があると思います。