DeepSeekが「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開
2026年10月17日、DeepSeekが「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開しました。
既存のV4.1-Flashを更新したモデルで、同社は「ベンチマークの成績向上」「タスク完了の高速化」「出力の短縮」を打ち出しています。
これは中国系のAIモデルに共通していますが、単に難しい問題を解くだけでなく、コスパのさらなる向上を目指した更新となります。
目次
Deepseek公表のベンチマーク評価値
今回の更新で特に注目したいのが、コードを書いたり、ツールを使って複数の手順を進めたりするエージェントとしての能力。
DeepSeekが公表した評価では、例えば次のような改善が報告されています。
| ベンチマーク | 主に評価すること | 前版 | 1017版 |
|---|---|---|---|
| DeepSWE v1.1 | ソフトウェアの課題を解決する力 | 74.2 | 77.0 |
| Terminal-Bench 4.0 | 端末上でコマンドやツールを使い、課題を完了する力 | 31.2 | 42.3 |
他社の上位モデルとの比較も注目です。
この比較では、V4.1-Flash-1017は、DeepSWE、Automation-Bench、Agents’ Last Exam、Apex Benchの4項目で、掲載モデル中の最高スコアになっています。
一方、Terminal-Bench、ProgramBench、NL2Repo、HLE、BabyVisionではClaude Opus 5が依然として上回る状況です。
現時点では、「どちらが全面的に上か」ではなく、課題によって(つまり何をさせたいかで)強みが違うことが分かります。
| ベンチマーク | V4.1-Flash-1017 | V4.1-Flash(前版) | Kimi K3 | GLM 5.3 | GPT 5.6-Sol | Claude Opus 5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| DeepSWE v1.1 | 77.0 | 74.2 | 67.5 | 66.9 | 73.0 | 74.0 |
| Terminal-Bench 4.0 | 42.3 | 31.2 | 12.6 | 37.9 | 39.9 | 51.8 |
| Automation-Bench v1.0.6 | 60.5 | 54.8 | 46.7 | 48.8 | 45.8 | 50.3 |
| Agents’ Last Exam | 35.4 | 31.8 | 27.6 | 28.5 | 26.7 | 28.6 |
| Apex Bench v1.1 | 72.1 | 64.6 | 47.8 | 56.6 | 54.3 | 65.8 |
| ProgramBench | 29.1 | 20.3 | 17.5 | 19.0 | 23.0 | 37.0 |
| NL2Repo-Bench | 68.2 | 65.4 | 58.0 | 58.0 | 56.8 | 75.3 |
| HLE(ツールなし) | 42.6 / 44.0* | 36.8 / 39.1* | 43.5 | 42.0* | 44.5 | 56.3 |
| BabyVision(ツールあり) | 92.5 | 89.6 | 85.7 | 非公表 | 88.9 | 94.1 |
| 分野 | 該当するベンチマーク | 主に見ること |
|---|---|---|
| ソフトウェア開発 | DeepSWE v1.1、ProgramBench、NL2Repo-Bench | ソフトウェアの課題解決、プログラミング、自然言語の指示からのコード一式の構築など。 |
| 端末操作・ツール利用 | Terminal-Bench 4.0 | コマンドやツールを使って課題を完了する力。コードを書く能力とも関係するが、それだけではない。smartscope+1 |
| 業務の自動化 | Automation-Bench | 営業・経理・サポートなどを想定した、複数の手順からなる業務の実行。 |
| 高難度の知識・推論 | HLE(ツールなし) | 高度な問題に答える力。 |
| 視覚理解 | BabyVision(ツールあり) | 画像を使った理解・推論。 |
| 詳細の確認が必要 | Agents’ Last Exam、Apex Bench v1.1 | 今回確認した資料だけでは、具体的な課題・採点方法の説明は保留。 |
最高スコアの中で特に目を引くのは、Automation-Benchの結果です。
Automation-Benchは、営業・マーケティング・サポート・経理などの業務を想定し、ツールを使って一連の作業を進めるエージェントを評価する試験です。単に質問へ答えるだけでなく、「業務の手順を実行する力」に関わります。
このベンチマークが最新版では60.5を記録し、比較表で他社最高のClaude Opus 5を10.2ポイントも上回っています。
ただし、これらは開発元による評価であり、実際の業務で同じ差が出るとは限りません。
価格面の強み
DeepSeek-V4.1-Flash-1017で注目したいのは、ベンチマークの成績だけではありません。
APIの利用料金が低く、さらに今回の更新では、前版より短い出力で、速くタスクを完了できると説明されています。
2026年10月18日時点の公式料金は、次の通り。これはチャットアプリの月額料金ではなく、開発者などが利用するAPIの従量料金です。
API料金は、出力100万トークン当たり0.60ドルから
| 課金対象 | オフピーク時 | ピーク時 |
|---|---|---|
| 入力:キャッシュ未使用・不一致 | 0.15ドル | 0.30ドル |
| 入力:キャッシュに一致した部分 | 0.003ドル | 0.006ドル |
| 出力 | 0.60ドル | 1.20ドル |
例えば、キャッシュを使わずに10万トークンを入力し、1万トークンを出力する処理なら、オフピーク時のモデル利用料は0.021ドルになります。
ただし、検索などの外部ツールの料金は別で、実際の利用量によって総額は変わります。
キャッシュとは、以前処理した入力と共通する部分の計算結果を再利用する仕組みであり、料金表では、キャッシュに一致した入力部分の単価は、通常入力の50分の1に設定されています。
そのため、長い資料や共通の指示を繰り返し使う場合には、費用をより抑えられるのです。
比べたいのは「1トークンの価格」より「1件の仕事の費用」
DeepSeekが公表したDeepSWEの比較では、最高性能側の設定で、1タスク当たりの平均費用は約0.20ドル未満。
低い推論設定では、約0.10ドルで72%超のスコアを記録したと報じられています。
同社の比較図では、他社モデルはおおむね2ドル〜10ドル超の範囲にあり、この評価条件では大きな価格差が示されているようです。
ですが、トークン単価が安くても、長く考え続けたり、失敗して何度もやり直したりすれば、利用トークンがかさんで総額は増えますよね。
ただ、今回の更新が打ち出す「出力の短縮」「タスク完了の高速化」は、単価とは別の方向から、1件の仕事にかかる費用を減らす取り組みとなっているんです。
なぜ、低コストで動かせるのか
背景には、1017版の土台となるV4.1-Flashの設計があり、技術報告では、特に次の工夫が説明されています。
①大きなモデルの一部だけを使う
V4.1-Flashは、主要部分に5,520億パラメータ(パラメータとは、AIが学習によって調整する、計算の設定値)を持ちますが、毎回そのすべてを計算に使うわけではありません。
「MoE」という仕組みにより、処理に応じて一部を選んで使います。
さらに、1トークン当たりに動くパラメータ数を、入力処理では約80億、出力生成では約160億に抑えています。
長い会話や資料を読み直す場面が多いエージェントでは、入力側の処理を軽くすることが効率化につながります。
②「読み取った内容の計算メモ」を小さくする
文章生成AIは、前に読んだ内容についての中間計算を「KVキャッシュ」として保存し、後続の処理に利用します。
そのため、長い文脈では、この保存領域やデータ転送が大きな負担になってしまう。
V4.1-Flashは、層をまたいだキャッシュの再利用や、数値を少ないビット数で保存する工夫がされているそうです。
技術報告では、GPUの高速メモリに常駐するグローバルKVキャッシュを、前世代のV4-Flashに対して約4分の1に削減したとしています。
これはモデル全体のメモリが4分の1になった、という意味ではなく、特定のキャッシュ部分の削減です。
このように、計算量だけでなく、メモリ容量やデータ転送の負担も抑えることで、運用コストを下げる設計になっているのです。
「安く動かせる理由」と「販売価格の理由」は別
以上のように、「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」には、計算やメモリの負担を減らす工夫があることは事実です。
ただし、API料金には会社の価格戦略も関わってきます。
今回このブログを書くためにAIを使って公開資料を分析したのですが、現在の低価格のうち、技術的な効率化が何割を説明するのか、採算がどうなっているのかまでは判断できませんでした。
したがって、「特別な仕組みによって、この価格が必然的に実現した」と断定するよりは、「効率化したモデル設計を土台に、低いAPI単価を戦略的に設定し、1017版では作業自体の効率も改善した」と捉えるのが適切でしょう。
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